鏡を抱いて泣く夜

 最近、結婚したということで芸能記事の見出しに名前が出ていた女優が、私が大学生の頃に、獣医の役を演じていたことがありました。やはり獣医である祖母が開院したクリニックで獣医として仕事をしながら、診察をする動物の飼い主や自分自身の人間関係で悩みつつ、人として成長していくというようなドラマです。クリニックの建物で、弟とその院長であるおばあさんと同居もしていて、時々、おばあさんは格言めいたことを言います。 


孫娘である獣医の誕生日、おばあさんは飾りも付いた大きめのおしゃれな手鏡をプレゼントします。その日の夜だったか、2、3日後の夜だったか、孫娘はふとした出来事にショックを受けて、家に帰ると自分の部屋にこもってしまいます。姉の様子を見ていた弟は、おばあさんに、「お姉ちゃん、大丈夫かな?放っておいていいの?」とおばあさんに言います。するとおばあさんは、「人は鏡を抱いて泣く夜も大事なんだよ。放っておきなさい。」と言って居間を出ていきます。


 よく、人として成長するというようなことを言いますが、自分にとって何をすることが今の自分の成長につながるのか、簡単に分かるように思えるときには、本当に自分の成長を知っているかどうか、疑わしいときなのではないかと私は思ったりします。ふとした出来事に思いがけないくらいショックを受けたり、思いがけないくらい些細な出来事に心の底から喜びを感じたり、そういうことがあるときが、本当に成長するチャンスに恵まれているときなんじゃないかと私は思います。 


鏡を抱いて泣く夜。そんなひとときがあるのが、本当にゆとりある人生と言うんじゃないかと私は考えます。